2014年6月7日土曜日

夏休みのゲーム留学: ゲームのサマースクール

 この10年あまりでゲーム教育が発達した北米では,ゲーム専攻のある高等教育機関の数は数百校にのぼる(業界団体ESAの最近の調査では,アメリカ国内だけでも381のゲーム専攻が存在する).
アメリカの特徴としては,ゲーム専攻にも多様性があり,2年制の短大から5年間の大学院博士課程,さらには現役の社会人向けの短期間の集中講座まで多くの選択肢が存在する.
 今回は,この中でも夏休み中に大学で行われるサマースクールについて紹介する.

多様な北米のサマースクール

サマースクールは,夏休みで空いている大学の施設を使って6月から行われる短期講座である.その種類はおおまかに3つにわかれる.
  • (1)受験生向けに大学の雰囲気を知ってもらうために,ゲーム教育を看板にしている大学が開講する.
  • (2)高校生以下向けに大学の空き教室を非営利企業が借りて,大学の教育内容とは関係なく開講する.
  • (3)社会人のキャリアアップなどで大学の教員が最新技術を教え,企業から派遣される人には認定証なども発行する.
順番に例をあげてみたい.
(1)の高校生サマースクールは,ゲーム教育のトップ大学が行っているもので,その学校の強みを生かしたものが多い. たとえば南カリフォルニア大学が高校生向けに行う4週間のサマースクールの中の科目「Introduction to Video Game Design」は南カリフォルニア大学の初年時教育にもとづくもので,修了者には入学後に3単位が認定される.南カリフォルニア大学は「Journey」の開発者を輩出した名門校だが,その強みを行かして,受講生向けにスタジオツアーが企画され,過去にはActivisionやEA Sportsを訪問している. またカーネギーメロン大学のNational High School Game Academyは同校の修士課程の特色であるアーティストとエンジニアの共同制作を高校生向けにカスタマイズして提供している.
  (2)の企業サマースクールは,大学の教育内容とは関係なく実施される有料セミナーだが,大学の雰囲気を知ることができる. アメリカではiD Tech Campsが全米各地数百校で実施している.
 (3)は企業から派遣される人も多いので値段はかかるが,それだけの価値はある.たとえばMITの専門職講座「Game Development for Software Engineers」は1週間で3,750ドルと高めだが,同校のMIT Game Labの講師(アシスタント)がソフトウェア開発者向けにゲーム開発を(ユーザテストまで含めて)教えるもので,受講者にはプログラミング,IDE,バージョンコントロールの技術的な知識が必須となっている.

 このように多様なコースが全米各地で開催され,今年の夏だけでも690以上のゲーム関連プログラムが開催される予定である.これだけ多いとなかなか定員に達しないサマースクールも多く,たとえば上記のMITのコースは6月の本記事執筆時点でも受講者申込を受けつけている.

ビザ

日本からアメリカへの短期滞在にはビザ取得は必要ないが,1週間のあたりの講習時間が一定時間を越える場合はビザが必要になる。したがってサマースクールの形態に応じて学生ビザを取得する必要がある.(ゲーム音楽のコースもあるバークリー音楽院のサマープログラムの学生ビザ案内が参考になる.)
 日本語の情報としては,日本から海外に夏休みを使って語学留学する人のための雑誌が出て旅行代理店が広告も出しているいるので,そちらで日本語情報を調べてから志望校に学生ビザが必要か質問するとよいだろう. (すでに学生ビザを取得して夏休みの語学留学に出かける人は,新たにサマースクールに通ってもビザを再取得する必要はない.)

おわりに

本記事ではアメリカでのサマースクールを紹介したが、他にも世界各地のゲーム研究拠点でサマースクールが開かれている。たとえば北欧のシリアスゲーム研究拠点の一つであるフィンランドのタンペレ大学でも大学院生およびプロを対象にしたシリアスゲームの国際サマースクールが開催される。


 日本の学生が語学留学に出かけることは珍しくなくなったが,ゲーム教育においても,ゲーム留学によって日本の学校ではできない国際体験を積むことが可能になっている.すでに日本の学生向けの留学雑誌でもCGやゲーム開発の宣伝をみかけることがある(ただし日本語広告を出している大学がいい大学とは限らない。北米の大学選びについては過去記事参照。).
 しかし,海外の大学がターゲットにしているのは現役学生だけではない.大学でも中高生から中堅の社会人まで、幅広い教育プログラムが提供されており,自分に適したプログラムを選ぶことができる.大学におけるゲーム開発者教育はそうした高等教育改革の最前線にもなっている。.

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